宇山智彦 藤本透子(編著)『カザフスタンを知るための60章』(明石書店)から、

全長7500キロ超の国境を共有するロシアとは、カザフスタンはとりわけ密接な関係を維持している。カザフスタンとロシアはともにソ連を構成していた国家であり、歴史的にも強い影響を受けてきた。現在も二国家間関係だけでなく、集団安全保障条約機構(CSTO)やベラルーシもまじえた関税同盟といった多国間の枠組みでも密接に繋がっている。2015年、関税同盟はアルメニアを含めた「ユーラシア経済同盟」(経済連合とも訳す)へ発展し、今後もクルグズスタンなどが加盟候補国となっている。(略)2006年九月に締結された「中央アジア非核兵器地帯条約」は地域の結束を示した数少ない成果の一つかもしれない(発効は09年3月)。ソ連時代から核実験が繰返され、環境破壊や住民の健康被害が著しいセミパラチンスク実験場を領内に持つカザフスタンは同条約を重視し、調印も実験場に近いセミパラチンスク市(現セメイ市)でなされた。ただし、前述のロシア主導のCSTOの基盤となっている「集団安全保障条約」を含め、条約調印国がすでに調印した書条約の権利・義務に抵触しないとの規定が盛り込まれ、実効性に問題があることも指摘されている。/それでもカザフスタンは、中央アジア諸国のなかでも「全方位外交」の手段として多国間協力の枠組みを積極的に活用している国であると言えよう。ナザルバエフ大統領は、連邦書いた以後の旧ソ連諸国の結束の必要を改めて強調し、1995年、いち早く「ユーラシア同盟」構想を提唱した自負がある(同名の統合構想を、2011年、ロシアのプーチン大統領も唱えた)。日本ではあまり知られていないが「アジア相互信頼醸成会議(CICA)という安全保障対話フォーラムは、ソ連解体直後の1992年10月のナザルバエフ大統領が国連総会で提唱した構想に基づいている。正加盟24カ国の中にはインドやパキスタン、パレスチナやイスラエルなど隣り合って対立を続けている国々も含まれている(日本はオブザーバー参加)。過去三回開催された首脳会合を含め、閣僚級以下さまざまなレベルでの会合が開かれている。2010年以降はカザフスタンと同じテュルク系の友邦トルコが議長国をつとめ、2014年には中国が議長国となり、5月には上海での首脳会合を主導した。(湯浅剛)

1980年代後半から世界では核兵器廃絶運動が高まり、とくに、ネヴァダ・セミパラチンスク運動がその機運を高め、セミパラチンスクにおける核実験場閉鎖が1989年8月29日に決定されている。当時の州共産党第一書記局であったボスタエフ氏の回想録には、息詰る権力闘争の歴史が詳述されている。1991年12月、ソ連が崩壊し独立国家共同体が成立し、カザフ・ソヴィエト社会主義共和国も独立してカザフスタン共和国となったが、同時に核兵器をすべてロシアへ移送移管し、核保有国からいち早く核兵器廃絶希求国へと政策転換している。その結果、外交努力が続けられ、2006年には中央アジア5カ国による非核兵器地帯条約に向けて首脳会議が開催された。2009年からセメイ条約が批准され、中央アジアの非核兵器地帯が守られている。(山下俊一)

Kimra Iron's Ownd/鉄考書

木村鉄に才能はありません。 が、そこからしか考えることも書くことも、できません。  詩のように小説を。 小説のように詩を。 物語は、 理論として構成として構想として概念として。

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