『現代思想 2月増刊号 2006 vol.34.3 総特集 フランス暴動いかし現在に繋がる 階級社会の行方』における、鵜飼哲+平野千香子+森千香子+なすび「討議 フランス暴動をどう見るか」から、
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鵜飼 (略)フランスは移民の国です。一九世紀後半、少なくともドイツが大国化するのに対して、フランスは人口の増加が非常に鈍かった。そこで主にヨーロッパのキリスト教国からの移民が奨励されてきました。アルジェリアのような、一九世紀半ばに獲得された植民地に植民するヨーロッパ人は、フランスだけではなくヨーロッパ全体から募集されました。しかし現在に繋がる大きな移民の波はやはり、第一次世界戦争後だと思います。成人男子の大量死の穴を埋めるべく、その戦後復興の過程で、ポーランド人、イタリア人、ポルトガル人、やはりカトリック国からの移民が多くやってくる。今ではなかなか想像しにくいですけれども、三〇年代にはこの人々も相当の差別を受けていたという歴史があります。/第二次世界戦争後、フランスの植民地が独立していくなか、アルジェリアが独立したのは一九六二年ですが、六〇年代の初めは、フランスは経済が非常に好調だった時代であり、主に自動車工場や炭鉱といったところに、独立したばかりの旧植民地諸国から、かなり組織的な移民の導入が図られます。これはフランス政府と、独立間もない新興国の政府の間で、ある種の秘密協定にのっとって取られた移民政策です。それから十数年後、オイル・ショックが起き、それ以降の不況のなかで工場はどんどん閉鎖されていき、工場の傍に集住していた移民たちの共同体がフランス社会からはっきり切り離され、ある種の陸の孤島のようになっていく。失業率もフランス平均の二倍から二倍半にのぼり、非常に不安定な形で、とりわけ若者たちが、その地域に無為のまま集団で暮らすという形がでてきてしまう。
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